タワーマンションといえば、眺望のよさ・充実した共用設備・高い資産価値——そんなイメージを持っている方は多いと思います。
でも最近、そのタワマンをめぐって気になるニュースが立て続けに報じられています。たとえば、修繕積立金が不足しているマンションが全国で約37%にのぼるという国土交通省の調査結果、大手ゼネコンの子会社を含む約30社が談合疑いで公正取引委員会の立入検査を受けた件、そして工事会社の社員が住民になりすまして修繕委員会に9ヶ月間潜伏していたという、にわかには信じがたい事件まで。
「うちは都会じゃないから関係ない」と思っているあなた。実は、地方都市のタワマン所有者こそ、今一度立ち止まって考えてほしい話があります。
まず知っておきたい、衝撃的な「なりすまし事件」
2025年、神奈川県内のあるマンションで、とんでもない事件が発覚しました。
修繕工事会社の従業員2名が、住民になりすまして大規模修繕委員会に約9ヶ月間も出席し続けていたのです。目的はシンプルで、自社に工事を発注させるための内部誘導。最終的に1名が建造物侵入の容疑で現行犯逮捕され、管理組合は偽計業務妨害と詐欺未遂で告訴しています。
2年後に数億円の大規模修繕を控えたマンションに、「山田(仮名)」と名乗る人物が修繕委員会に立候補し、委員として加わりました。彼は率先して業者の見積もりを比較する資料を作成し、特定の業者を推すような発言も繰り返していました。しかし議論が進むにつれ、住民たちは不信感を抱くように。管理人が「委員会の日以外で見かけたことがない」と指摘したことをきっかけに調べると、その人物が住んでいるはずの部屋には、別人が暮らしていたことが判明。その後、大阪の工事会社の社員であることが明らかになりました。
では、どうやって「住民」として入り込んだのか。本物の住民・山田さん(仮名)の話によれば、きっかけはポストに投函された1枚のチラシでした。「住まいのアンケート調査に協力すれば報酬を受け取れる」という内容。応募すると月1回のオンライン面談が始まり、半年ほど経った頃に「修繕を安くできる業者を紹介したい。委員に立候補して名義を貸してほしい」と持ちかけられたといいます。
「なんでそんなことが……」と思いますよね。でも考えてみると、タワマンって意外と隣近所の顔を知らないもの。数百戸〜千戸規模になると、どこの誰が住民かなんて把握しきれません。だからこそ、こういう手口が成立してしまうんです。ちなみにこの問題は、NHKの「クローズアップ現代」(2026年3月23日放送)でも特集として取り上げられており、社会的な注目度が高まっています。
「なりすまし」だけじゃない。業界全体の「談合」も深刻
なりすましと並んで深刻なのが、業界全体に広がる「談合」という問題です。
複数の工事会社が事前に受注業者や価格を示し合わせ、競争が形骸化するというものです。昨年、国の公正取引委員会は大手ゼネコンの子会社を含む約30社に対して立入検査を行っており、この問題が業界全体に広がっていることが示されています。
なりすましにしても談合にしても、その背景には「大規模修繕は億単位の発注になる」という事実があります。工事を受注できれば莫大な利益が得られる。だから不正のリスクを冒してでも潜り込もうとする業者が後を絶たないのです。そして管理組合の住民は基本的に素人。専門知識がなければ、不正な見積もりや誘導に気づけません。
タワマンの大規模修繕、そもそも何が難しいのか
大規模修繕は、マンションの経年劣化を補修するために約12〜15年周期で行う工事のことです。外壁塗装・防水・配管の交換など、建物の寿命を延ばすために欠かせない作業で、これを怠ると劣化が一気に進み、資産価値の低下につながります。
通常のマンションでも一戸あたり75〜100万円ほどかかりますが、タワマンはその1.5〜2倍、つまり一戸あたり112〜200万円程度が目安とされています。500戸規模であれば最低でも6億〜10億円。これだけの金額が動く工事だからこそ、不正が起きやすいわけです。
さらにタワマン特有の難しさがあります。高層部分はゴンドラや特殊な移動式足場を使った工事になるため、対応できる施工業者が限られます。独自のデザインを持つ物件ではカスタム対応が必要で、コストが膨らみやすい。エレベーターや免震装置など特殊設備の修繕費は、国土交通省の長期修繕計画ガイドラインにも十分な記載がなく、計画段階で見落とされがちです。
そして何より難しいのが、住民間の合意形成です。高層階・低層階で修繕への意識が異なり、居住目的・投資目的でも温度差がある。「修繕積立金を値上げしましょう」という提案が総会で否決されるケースも珍しくありません。
修繕積立金の不足は、すでに「全国的な問題」
国土交通省の調査によると、修繕積立金が不足しているマンションは全体の約37%にのぼります。つまり、3棟に1棟以上が資金不足の状態です。
なぜこうなるかというと、新築分譲時に購入しやすくするために積立金を低めに設定するケースが多いからです。実際に大規模修繕を迎えて初めて「予算が全然足りなかった」と気づく、というパターンが各地で起きています。
さらに追い打ちをかけているのが、建設資材の価格高騰と人件費の上昇です。2025年時点でも建設物価は上昇傾向が続いており、10年前に立てた修繕計画の金額では到底足りなくなっている物件が続出しています。
積立金が不足すれば修繕が延期・縮小される。修繕が不十分なまま放置されれば建物が劣化し、資産価値が下がる。そして売りにくい物件になると空き部屋が増え、積立金の負担がさらに重くなる——という悪循環に陥るリスクがあります。
地方都市のタワマン、リスクはより深刻かもしれない
ここで、地方都市のタワマン所有者の方に考えてほしいことがあります。
都心のタワマンは需要が底堅く、多少の管理上の問題があっても売買が成立しやすい面があります。しかし地方都市では、人口減少・需要の縮小という構造的な課題がある中で、修繕問題が加わると物件の流動性(売りやすさ)に直接影響します。
買い手としては、「修繕積立金は十分か」「管理組合はしっかり機能しているか」を当然チェックします。積立金不足や管理の不透明さが判明すれば、価格交渉の材料にされたり、そもそも検討から外されたりすることになります。
また、地方都市では対応できる大規模修繕業者の数自体が少なく、競争原理が働きにくいため、コストが割高になりやすいという事情もあります。
対策は動き始めている。でも「自分ごと」にする意識が一番大切
マンション管理の専門家・香川希理さんは、なりすまし対策として「本人確認」「第三者の目」「人任せにしない」の3点を挙げています。また、実効性ある対策のために法整備の必要性も訴えています。
行政も動いています。2026年1月、横浜市は工事会社の見積もり金額を査定するサービスを民間事業者と提携して開始。国土交通省もマンション標準管理規約の見直しを進めており、管理組合の本人確認ルールの厳格化や修繕積立金の設定基準の引き上げが盛り込まれる見通しです。
ルールが整備されることは良いことです。ただ、制度が整う前に問題が顕在化するリスクは残ります。専門家が指摘するように、「人任せにしない」という意識こそが最大の防衛策です。自分のマンションの修繕計画・積立金残高・管理組合の運営状況を、一度きちんと確認しておくことをおすすめします。
「今が売り時かも」と思ったら、まず査定から
以上を踏まえると、タワマン所有者にとって今は「売却を検討するタイミングとしてあながち悪くない」時期とも言えます。
大規模修繕の前後は物件の評価が変わりやすく、修繕が完了していれば売りやすくなる一方で、積立金不足が判明した後は交渉で不利になりがちです。また、今後制度変更や修繕コスト増が続く中で、「管理が良好なうちに売る」という選択肢も十分に合理的です。
ただ、「売るべきかどうか」は物件の状態・市況・ご自身の状況によって大きく異なります。所有されている資産の活用、売却のご相談は岡山市内でマンション取引の実績豊富な「ウェーブハウス」にぜひお任せください!
※本記事で紹介した事件の情報は公開報道をもとにしています。人物・物件が特定されないよう一部内容を調整しています。修繕積立金の金額や割合は国土交通省調査・各種専門機関のデータに基づく目安であり、個々の物件によって異なります。売却の判断は必ず専門家にご相談ください
