マンションの積立金といえば、銀行に預けておくのが当たり前でした。ところが工事費の高騰が続く中、「預けるだけでは資金の価値が目減りする」として、国債などで運用する管理組合が現れ始めています。岡山のマンションにとっても、決して遠い話ではありません。
預金から債券へ広がる積立金の運用
背景にあるのは、建築コストの継続的な上昇です。建設資材の物価はこの10年で4割超上昇したと報じられており、将来の工事費が膨らむ一方、預金金利だけでは積立金の増え方が追いつきません。お金の額面は同じでも、「その資金で実施できる工事の量」が年々減っていく――これが実質的な目減りの正体です。
こうした中、首都圏では積立金を国債や格付けの高い社債などで運用する管理組合が登場しています。川崎市のタワーマンションでは、駐車場の外部貸しなどの実物運用と債券運用を組み合わせ、15年間で約2億4,000万円の利益を生んだ事例も報じられており、「貯蓄から投資へ」の流れが管理組合にも波及しつつあります。
管理組合が現実的に検討できる運用先は、おおむね次の3つに集約されます。
| 運用先 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 定期預金 | 仕組みが分かりやすく、総会でも理解を得やすい | 預金保険の保護は1金融機関あたり元本1,000万円まで。資金の集中に注意 |
| 新窓販国債 | 管理組合でも購入可能。満期保有なら国が元本と利子を支払う | 中途売却は市場価格となり、元本割れの可能性がある |
| マンションすまい・る債 | 住宅金融支援機構が発行する管理組合専用の利付10年債。1口50万円から | 年度ごとの募集制。応募には積立要件などの確認が必要 |
岡山のマンションも無関係ではない
工事費の上昇は全国共通であり、岡山市内のタワーマンションや分譲マンションも例外ではありません。むしろ地方都市では、首都圏の大型物件と比べて積立金の総額が小さいケースも多く、同じ目減り率でも将来の工事計画に与える影響は小さくないと考えられます。
一方で、実際に運用へ踏み出している管理組合はまだ少数派です。理事が輪番制で毎年交代するマンションでは意思決定が前例踏襲になりやすく、「これまで通り定期預金へ」という判断が続きがちです。運用にはリスクの説明と総会での合意形成が欠かせないため、金融の知識を持つ区分所有者がいるかどうかで、取り組みやすさに差が出ているのが実情といえます。
ご自身のマンションがどうなっているか気になる方は、まず総会資料の収支報告を確認してみてください。積立金がどこに、どのような形で置かれているかは、そこに記載されています。
運用を始める前に確かめたいこと
積立金は将来の工事のための資金であり、増やすこと自体が目的ではありません。検討にあたっては、次の点を押さえておく必要があります。
第一に、換金性です。長期修繕計画と照らし合わせ、工事の時期に資金を引き出せるかを確認します。新窓販国債は中途売却が市場価格になる一方、すまい・る債は初回発行日から1年以上経過すれば手数料なしで中途換金できる設計です。第二に、手続きの正当性です。運用方針は理事会だけで決めず、総会決議を経て管理規約との整合性を確認しておくことが、後のトラブルを防ぎます。
そしてもう一つ。積立金の管理状況は、売却時の評価にも関わります。中古マンションの買い手は「管理を買う」と言われるほど、管理組合の財務や運営姿勢を重視する傾向が強まっています。積立金を計画的に確保し、管理計画認定の取得や効率的な運用に取り組むマンションは、資産価値の面でも評価されやすくなると考えられます。
まとめ
積立金を「預けて終わり」にせず、目減りから守る工夫を始めた管理組合が出てきています。ご自身のマンションの積立金がどう管理されているかを知ることは、住まいの将来を考える第一歩です。
マンションの管理状況が市場でどう評価されるのか、現在の資産価値とあわせて確認してみたいという方は、お気軽にご相談ください。
